伝説の帰還:『グラディエーター2』の興奮をもう一度
「私の名はマキシマス・デシマス・メレディウス…」
映画史に刻まれたあの名台詞から25年。2024年秋、巨匠リドリー・スコット監督による伝説の続編『グラディエーター2』がついに公開されました。前作でラッセル・クロウ演じるマキシマスが命を賭して戦ったコロッセオの熱狂が、四半世紀の時を超えてスクリーンに蘇り、世界中を熱狂させました。
そして、その壮大な物語の舞台として再び選ばれたのが、第1作と同じロケ地、地中海の宝石マルタ共和国です。

イタリアのシチリア島の南、地中海のほぼ中央に位置するこの小さな島国は、「地中海のハリウッド」という異名を持ちます。『トロイ』『ミュンヘン』『ワールド・ウォーZ』、そして『ゲーム・オブ・スローンズ』。数々の超大作がこの地で撮影されてきました。
映画の興奮冷めやらぬ今こそ、聖地巡礼のベストタイミングです。街全体が巨大な映画セットのように、中世の面影を色濃く残すマルタ。蜂蜜色の石灰岩(グロボジェリナ・ライムストーン)で作られた堅牢な要塞都市は、現代の風景を遮断し、訪れる者を瞬時に古代ローマや中世ヨーロッパの世界へと誘います。
今回は、映画『グラディエーター』シリーズの聖地を巡りながら、この国の「真の姿」に迫ります。単なるロケ地巡りではありません。2025年の最新マイル事情を反映した、賢く優雅にこの絶景を訪れるための完全ガイドです。
伝説の始まり:『グラディエーター』(2000) の聖地
まずは、アカデミー賞作品賞を受賞した第一作目のロケ地から旅を始めましょう。CG全盛の現代とは異なり、当時は巨大な実物セットが組まれ、圧倒的なリアリティが生み出されました。
リカゾーリ砦 (Fort Ricasoli):ローマ・コロッセオの幻影
グランド・ハーバーの入り口、ヴァレッタの対岸に鎮座する巨大な要塞、リカゾーリ砦。17世紀後半、聖ヨハネ騎士団によって建設されたこの要塞こそが、映画の中でローマのコロッセオが再現された場所です。
実はこの場所、続編『グラディエーター2』でも再び撮影に使用されました。25年の時を経て、同じ場所で新たな伝説が刻まれたのです。まさにシリーズ共通の「聖地」と言えるでしょう。

撮影当時、この砦の広大な敷地内に、高さ15メートル(残りはCGで補完)のコロッセオのセットが建設されました。マキシマスが虎と戦い、皇帝コモドゥスと対峙したあの闘技場は、ローマではなく、ここマルタにあったのです。
現在、砦内部は老朽化のため立ち入り禁止区域が多くなっていますが、対岸のヴァレッタ(アッパー・バラッカ・ガーデンなど)からその威容をはっきりと眺めることができます。双眼鏡を片手に、「あそこにマキシマスが立っていたのか…」と想像を巡らせる時間は、映画ファンにとって至福のひとときとなるでしょう。
古都イムディーナ (Mdina):静寂の貴族の街
マルタ島の中央部の丘の上に、城壁に囲まれた小さな街があります。それが「静寂の街(Silent
City)」と呼ばれる古都イムディーナです。ヴァレッタが建設される前、中世におけるマルタの首都でした。

この街のメインゲートは、映画の中でローマの街並みへの入り口として登場しました。バロック様式の美しい門をくぐると、そこは別世界。車がほとんど通らない迷路のような路地、貴族の館、そして静寂。
イムディーナは、海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン1で、七王国の首都キングズ・ランディングのロケ地としても使用されました。石畳の響きに耳を澄ませば、ラニスター家の陰謀が聞こえてきそうです。
【撮影のポイント】
日中は観光客で賑わいますが、夕方以降は「静寂の街」の本領発揮です。ガス灯のようなオレンジ色の街灯に照らされた路地は、息をのむほど幻想的。宿泊はイムディーナ内のホテル(The
Xara Palace Relais &
Chateauxなど)をおすすめします。
歴史の深掘り:聖ヨハネ騎士団と「大包囲戦」

『グラディエーター』の世界観に浸るなら、マルタの実際の歴史を知っておくと、旅の深みが何倍にも増します。マルタの歴史は、まさに「戦い」の歴史だからです。
1530年、ロードス島を追われた聖ヨハネ騎士団(後のマルタ騎士団)がこの島にやってきました。彼らはオスマン帝国の脅威に対抗するため、島全体を要塞化しました。そして1565年、歴史に残る「大包囲戦(The
Great
Siege)」が勃発します。
わずか数千人の騎士団とマルタの民兵が、4万人のオスマン帝国軍を相手に3ヶ月以上も持ちこたえ、奇跡的な勝利を収めました。この勝利がなければ、ヨーロッパの歴史は変わっていたと言われています。
ヴァレッタの街は、この勝利を記念して建設された「紳士のための要塞都市」です。映画のマキシマスが見せた不屈の闘志は、かつてこの島を守り抜いた騎士たちの魂と重なるものがあります。マルタの石壁に触れるとき、あなたは数百年前に流された血と汗の記憶に触れているのです。
『グラディエーター2』(2024) 聖地巡礼
2024年に公開された続編も、やはりこのマルタで撮影が行われました。映画館で目撃したあの壮大な海戦シーンや、新たな闘技場の熱狂。その舞台を実際に訪れることができます。
ヴァレッタ大港 (Grand Harbour):海戦の舞台
天然の良港として知られるグランド・ハーバー。複雑に入り組んだ海岸線と、海に突き出した要塞群。その壮大な景観は、映画のスペクタクルシーンに欠かせません。

『グラディエーター2』で描かれた大規模な海戦シーン。グランド・ハーバーは、かつての大包囲戦の主戦場でもありました。映画のシーンと実際の風景を重ね合わせることで、より深い感動が得られるはずです。
【おすすめ体験】
伝統的な小舟「ルッツ(Luzzu)」や、ヴァレッタとスリー・シティーズを結ぶフェリーに乗って、海から要塞を見上げてみてください。その圧倒的なスケールと威圧感は、陸上からは決して味わえないものです。
マニアが唸る!マルタの「映像美」スポット
映画ロケ地以外にも、マルタには「映像美」を極めたスポットが点在しています。カメラを持って訪れたい、至高の場所を紹介します。
アッパー・バラッカ・ガーデン:大砲と絶景
ヴァレッタで最も眺めの良い場所と言えばここ。毎日正午と午後4時に空砲が発射される「サルーティング・バッテリー」は必見です。

眼下にはグランド・ハーバー、対岸にはスリー・シティーズの要塞群。このパノラマビューは、地中海屈指の絶景と言っても過言ではありません。
聖ヨハネ準司教座聖堂:黄金の礼拝堂
外観は質素な要塞ですが、一歩足を踏み入れると、そこは黄金の世界。バロック芸術の極致とも言える内部装飾は、息をのむ美しさです。

床一面に広がるのは、騎士たちの墓碑である大理石のモザイク画。天井には聖ヨハネの生涯が描かれています。そして、併設の美術館には、バロック絵画の巨匠カラヴァッジョの最高傑作『洗礼者聖ヨハネの斬首』が展示されています。光と影の劇的なコントラストは、まさに映画的な美しさです。
ヴァレッタの坂道:光と影の迷宮
起伏の激しいヴァレッタの街並みは、どこを切り取っても絵になります。特に、海へと続く長い階段や、カラフルな出窓(ガレリア)が並ぶ路地は、散策するだけで楽しい場所です。

青の洞門 (Blue Grotto):自然の神秘
マルタ島南部に位置する、自然が作り出した巨大なアーチ。太陽の光が海底に反射し、海面が鮮やかなエメラルドグリーンやブルーに輝く現象が見られます。

『トロイ』の撮影も行われたこの場所は、荒々しい断崖絶壁と美しい海のコントラストが魅力。ボートツアーに参加して、洞窟の中へ入るのがおすすめです(天候により欠航する場合があるので注意)。
グラディエーターの宴:マルタ料理を味わう

旅の楽しみといえば食事。マルタ料理は、イタリア料理をベースに、アラブや北アフリカの影響を受けたユニークな食文化です。
ウサギ料理 (Fenkata)
マルタの国民食といえばウサギ。「フェンカタ(Fenkata)」と呼ばれるウサギのシチューや、ガーリックとワインで炒めた料理が有名です。臭みは全くなく、鶏肉のように淡白で柔らかい味わい。騎士団の時代から愛されてきたスタミナ料理です。
パスティッツィ (Pastizzi)
街中の至る所で売られている国民的スナック。リコッタチーズや豆のペーストを包んだパイです。焼きたてのサクサク感は病みつきになります。1つ50セント〜1ユーロ程度と激安なのも嬉しいポイント。
チスク (Cisk)
マルタの地ビール。暑い地中海の気候にぴったりの、すっきりとしたラガービールです。テラス席で海を眺めながら飲むチスクは最高です。
実践ガイド:マルタ旅行のヒント
移動手段
マルタには電車がありません。主な移動手段はバスかタクシーです。
- バス (Tallinja): 島中を網羅していますが、時間はルーズで混雑しがち。時間に余裕がある人向け。
- 配車アプリ (Bolt / Uber / eCabs): マルタではBoltが最も普及しています。料金も手頃で、クレジットカード決済が可能。効率よくロケ地を回るなら必須です。
- フェリー: ヴァレッタ〜スリー・シティーズ、ヴァレッタ〜スリーマ間の移動はフェリーが便利で快適です。
お土産:イムディーナ・ガラス
マルタの伝統工芸品といえばガラス。特に「イムディーナ・ガラス」は、地中海の色を閉じ込めたような鮮やかな色彩が特徴です。花瓶や置物だけでなく、アクセサリーや小皿など、持ち帰りやすいアイテムも豊富です。
日本からのアクセスとマイル戦略(2025年最新版)
日本からマルタへの直行便はありません。ヨーロッパや中東の主要都市を経由するのが一般的です。ここでは、2025年の最新マイル事情を反映した、快適にアクセスするための2つの主要ルートを解説します。

1. ターキッシュエアラインズ(ANAマイル/スターアライアンス)
ANAマイラーにとっての最適解は、イスタンブール経由のターキッシュエアラインズです。
- 2025年の変更点:
ANAマイルの国際線特典航空券で「片道発券」が可能になりました(2025年6月〜)。これにより、往路はターキッシュ、復路は別の航空会社といった柔軟な旅程が組みやすくなっています。 - メリット: 燃油サーチャージが比較的安い(時期による)。機内食が世界トップクラスに美味しい(フライングシェフが搭乗)。
- ラウンジ: イスタンブール空港の「Turkish Airlines
Business
Lounge」は世界最大級。ライブキッチン、ピアノ自動演奏、ゴルフシミュレーターまである「テーマパーク」のようなラウンジです。乗り継ぎ時間が長くても全く飽きません。
詳しくはANAマイル完全初心者ガイドをご覧ください。
2. エミレーツ航空(JALマイル提携)
JALマイラーなら、ドバイ経由のエミレーツ航空が強力な選択肢です。
- 2025年の注意点:
JALマイルの提携社特典航空券の必要マイル数が増加傾向にあります(2025年6月改定)。また、エミレーツ航空の燃油サーチャージは高止まりしているため、総額コストには注意が必要です。 - メリット:
世界最高峰のサービス。A380機材なら、ビジネスクラス後方に「機内バーラウンジ」があり、空の上でカクテルを楽しめます。この体験は、多少のマイル増額を払ってでも味わう価値があります。 - ストップオーバー: ドバイで数泊して、砂漠のリゾートを楽しむのもおすすめ。マルタとは全く違う「アラビアン・ナイト」の世界も体験できます。
JALマイルの使い方はJALマイル完全初心者ガイドで解説しています。
まとめ:英雄たちの魂を感じる旅へ
『グラディエーター』シリーズの世界観と、マルタの圧倒的な歴史美。この二つが交差する場所で、あなたも物語の一部になってみませんか?
リカゾーリ砦の風に吹かれ、イムディーナの静寂に包まれ、聖ヨハネ大聖堂の黄金に目を奪われる。その体験は、単なる観光を超えた、魂を揺さぶる旅になるはずです。

映画の余韻に浸りながら、ぜひこの奇跡の島を訪れてみてください。マイルを貯めて、ビジネスクラスで優雅に。準備は今から始めましょう。
他のヨーロッパ映画ロケ地も気になる方は、ヨーロッパ映画ロケ地ガイドもチェックしてみてください。

コメント