この記事の結論(30秒でわかるこの記事のポイント)
「アライアンス一本足打法」は、2026年に死にます。
もはや「スターアライアンスだけで世界を回る」時代ではありません。
2025年6月の「ANA国際線片道発券」解禁と、デルタ航空の「欧州発サーチャージ撤廃」により、以下のハイブリッド・アルゴリズムが最強の解となりました。
- 往路(日本発):ANA(スターアライアンス)
高いサーチャージを払ってでも、「The Room/The Suite」の個室と日系ホスピタリティを買う。 - 復路(海外発):デルタ航空(スカイチーム)
サーチャージ無料(または格安)の恩恵を受けつつ、必要マイル数が少ない「片道発券」で帰国する。
この「いいとこ取り」戦略により、従来の往復発券に比べて一撃で15万円以上のコストカットと、2つの異なるラグジュアリー体験が可能になります。
はじめに:SFC会員でもスカイチーム(デルタ)に乗るべき理由
「私はSFCだから、スターアライアンスしか乗らない」
「JGCだからワンワールド一択だ」
もしあなたが、2026年になってもそのマインドセットで旅をしているなら、それは「忠誠心」ではなく、単なる「機会損失(Opportunity Loss)」です。
私は現在、ANAのSFC(スーパーフライヤーズ)、JALのJGC(グローバルクラブ)、そしてデルタ航空のゴールドメダリオン(アメックス付帯)のすべてを保有しています。
いわゆる「トリプルホルダー」として、あらゆるアライアンスのラウンジと優先レーンを使い倒してきた私だからこそ、断言できる真実があります。
「どれか一つに絞る時代は終わった」と。

スターアライアンスとスカイチームを併用するメリット
なぜ今、この組み合わせなのか?
それは、「ANAマイルでデルタに乗れないか?」といったアライアンスの壁を嘆くのではなく、「別々に発券して最強の旅程を組む」ことにこそメリットがあるからです。
これこそが、かつてバックパッカーや上級マイラーだけが知っていた裏技であり、2026年には「公式の正攻法」へと昇華されるメソッドなのです。
2026年のマイル戦略:ANA片道発券とサーチャージ無料の衝撃

なぜ今、この戦略なのか?
それは、航空業界のルールブックが2025年に書き換えられたからです。具体的には3つの「Fact(事実)」が、これまでの常識を過去のものにしました。
Fact 1: ANA国際線特典航空券「片道発券」解禁(2025年6月)
これが最大のトリガーです。
これまでANAのマイルを使うには「往復」での発券が必須でした。
「行きはANAが取れたけど、帰りが空いていない…」
この状況で、泣く泣く旅程全体をキャンセルした経験があるでしょう。
しかし、2025年6月24日以降、ANAもついに片道発券が可能になります。
これが意味するのは、「帰りの便」をANAに依存する必要がなくなった、ということです。
Fact 2: デルタ航空の「欧州発」サーチャージ撤廃(ただし条件あり)
ここが最も誤解の多いポイントであり、今回の戦略の肝です。
デルタ航空(スカイチーム)は、「ヨーロッパ発・日本行き」の特典航空券において、デルタ航空運航便(Delta Metal)に限り燃油サーチャージを徴収しません。
⚠️ 重要:パートナー便の罠
同じスカイチームでも、エールフランス(AF)やKLMオランダ航空(KL)の運航便には、依然として高額なサーチャージがかかる場合があります。
「スカイチームなら何でも無料」ではありません。
必ず「デルタ航空の機材(DL便)」を選ぶこと。これが鉄則です。
日本発の便では高額なサーチャージがかかりますが、ロンドンやパリから「米国経由(シアトル/デトロイト等)」で日本に帰るルートを取ることで、この恩恵を最大限に受けることができます。
Fact 3: 世界一周航空券(RTW)の終焉と孤独
かつての「マイラーのゴール」であった、ANA(スターアライアンス)の世界一周航空券(RTW: Round The World)は、2025年6月をもって新規発券を終了しました。
「少ないマイルで世界を回る」という錬金術は封じられたのです。
これからの時代は、パッケージ化されたRTW商品ではなく、「自分の頭で優れた片道航空券を組み合わせる(Unbundling)」能力が問われます。
システムに使われるのではなく、システムをハックする者だけが、甘い汁を吸える時代の到来です。
【図解】ANAとデルタを組み合わせるハイブリッド発券の具体的手順
では、具体的にどう組めばいいのか?
私の推奨するゴールデンルートは、「機能による使い分け」です。
- 往路(Outbound):体験を買うフェーズ
日本発のフライトは、機内食も日本人向けで品質が高く、ラウンジ(ANA SUITE LOUNGE等)も充実しています。「これから旅に出る」という高揚感を最大化するために、ここでは「ANA The
Room / The Suite」を狙います。サーチャージは「必要経費」と割り切ります。 - 復路(Inbound):効率を買うフェーズ
旅の終わり、疲れて帰るだけのフライトに過剰なサービスは不要です。必要なのは「フルフラットで寝ること」と「コストを抑えること」。ここで「デルタ・ワン(Delta One)」の出番です。
Route A:北米ピンセット作戦 (The North American Pincer)
アメリカ西海岸・東海岸を攻めるルートです。

Step 1: 往路 [HND -> JFK/LAX] by ANA
羽田からニューヨーク(JFK)またはロサンゼルス(LAX)へ。
狙うはもちろん、B777-300ERの新機材「The Room」です。
圧倒的な個室感と、日本の航空会社ならではのきめ細やかなサービスで、12時間超のフライトを「楽しむ時間」に変えます。
妄想旅程:ハイブリッドの「時差ボケなし」スケジュール
DAY 1: 東京(羽田)
22:55発 (NH160) – 深夜便こそThe Roomの真価が発揮されます。
巨大な4Kモニターで映画を1本観て、フルフラットのベッドで熟睡。
「寝ている間に太平洋を越える」という贅沢。
DAY 1: ニューヨーク(JFK)
22:35着 (同日) – 到着も夜です。
そのままホテルへ直行し、シャワーを浴びて泥のように眠る。
翌朝、完璧なコンディションでマンハッタンの朝を迎えることができます。
これが「夜行便×個室」の最強コンボです。
Step 2: 現地移動 [US Domestic]
アメリカ国内の移動は、デルタ航空(スカイチーム)でもユナイテッド航空(スターアライアンス)でも、その時安いチケットをキャッシュで買えばOKです。
制限に縛られる必要はありません。

Step 3: 復路 [SEA/LAX/DTW -> HND] by Delta
帰国は、シアトル(SEA)、ロサンゼルス(LAX)、デトロイト(DTW)などのデルタのハブ空港から羽田へ。
最新のA350-900やA330-900neoに搭載された「デルタ・ワン スイート」は、全席ドア付きの個室タイプ。
ANA The Roomに勝るとも劣らないプライバシー性がありながら、「燃油サーチャージがかからない(または格安)」という圧倒的なアドバンテージがあります。
デルタ復路の「ここが凄い」
1. ラウンジの食事が「アメリカン」すぎる
シアトルのSky Clubでは、地元のクラムチャウダーとIPA(クラフトビール)が飲み放題。
搭乗前に「最後のアメリカ」を胃袋に詰め込むことができます。
2. スリッパとパジャマがない?(※要確認)
デルタは日系と違い、パジャマの提供がない路線が多いです。
しかし、アメニティキット(Missoni製など)のセンスは抜群。
「自分の着慣れたリラックスウェア」を持ち込むのが、旅慣れたハイブリッド・マイラーの流儀です。
Route B: 欧州クロスオーバー (The European Cross)
サーチャージ問題が最も深刻なヨーロッパ便でこそ、この真価が発揮されます。
Step 1: 往路 [HND -> LHR/FRA] by ANA
ロンドン(LHR)やフランクフルト(FRA)へ。
往路の夜便でゆっくり休み、現地の朝に到着する。この「整ったスケジュール」は日系エアラインの独壇場です。
Step 2: 復路 [CDG/AMS -> HND] by Delta (via USA)
ここが最大のハックポイントです。
通常、欧州からの帰国は「直行便(ANA/JAL/AF)」を選びたくなります。
しかし、あえて「大西洋を渡ってアメリカ経由(Transatlantic Route)」を選びます。
- AMS -> SEA/DTW (Delta One)
- SEA/DTW -> HND (Delta One)
「えっ、遠回りでは?」と思いますか?
はい、距離は伸びます。しかし、これが「ステータス会員の贅沢」なのです。
デルタ・ワンでシャンパンを飲み、フルフラットで寝て、アメリカのラウンジでハンバーガーを食べ、また寝る。
この「空飛ぶホテル」の滞在時間が倍になることは、苦痛ではなく「ボーナスタイム」です。
しかも、これでサーチャージは数千円〜1万円程度(諸税のみ)。直行便で10万円払うより、その分を現地のホテル代に回すべきです。
SFCとデルタアメックスゴールドの2枚持ちが最強な理由
このハイブリッド戦略を実行する上で、避けて通れないのが「ステータスの壁」です。
ANAのラウンジにはSFCが必要ですが、デルタのラウンジや優先チェックインにはスカイチームのステータスが必要です。
「平会員」でデルタに乗っても、エコノミーの列に並ばされるだけで、この戦略の真価(ラグジュアリー体験)は半減します。
デルタ・ゴールドメダリオンを「金」で買う
しかし、修行僧の皆さんならご存知の通り、デルタのステータスは「飛んで取る」必要はありません。
「デルタ スカイマイル アメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード」を持つだけで、自動的に「ゴールドメダリオン」が付帯します。
このカードの年会費は決して安くありませんが、以下のメリットを考えれば、1回のハイブリッド旅行で元が取れます。
- スカイチーム・エリートプラス資格:デルタだけでなく、エールフランス、KLM、大韓航空のラウンジも同伴者1名まで無料。
- 優先チェックイン・優先搭乗:長蛇の列をスキップできる「時間的価値」。
- 手荷物優先受け取り:到着後、真っ先にスーツケースが出てくる快感。
つまり、SFC(ANAカード)とデルタアメックスゴールドの「2枚持ち」こそが、2026年の最強装備なのです。
ラウンジ・ホッピングの極意
ハイブリッド発券の隠れた楽しみ、それが「異種格闘技戦」のようなラウンジ体験です。
羽田空港(出発時):ANA SUITE LOUNGE
往路はANAです。
ダイニングhでステーキを食べ、シャワーを浴びてから「The Room」に乗り込む。
これは慣れ親しんだ、安心の「実家」のような体験です。
シアトル/ロス(帰国時):Delta Sky Club
復路はデルタです。
アメリカの「Sky Club」は、近年劇的な進化を遂げています。
特にシアトル(SEA)やロサンゼルス(LAX)の旗艦ラウンジは、広大なスペース、地元のクラフトビール飲み放題、オープンエアのデッキなど、日系ラウンジにはない「開放感」と「パーティー感」があります。
「行きは静寂、帰りは喧騒」。
このコントラストを楽しめるのも、アライアンスを跨ぐ旅の醍醐味です。
ANA往復 vs ハイブリッド発券のコスト比較シミュレーション

「でも、別々に取るとマイル効率が悪いのでは?」
そう疑うあなたのために、私が試算したバランスシート(損益計算書)を公開します。
(※2026年1月想定 / 東京-ロンドン往復ビジネスクラス)
| 項目 | プランA:ANA往復(従来) | プランB:ハイブリッド発券 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 必要マイル数 | 約110,000 ANAマイル | 55,000 ANA + 80,000 Delta (計 135,000マイル相当) |
マイル数はプランAの勝ち(▲2.5万) |
| 燃油サーチャージ他 | 約180,000円 | 約90,000円 (ANA) + 約10,000円 (DL) (計 100,000円) |
コストはプランBの圧勝(+8万円) |
| 予約難易度 | 激ムズ (Sランク) | 普通 (Bランク) | プランBの圧勝 |
解説:8万円の価値をどう見るか
マイル数は、ハイブリッド発券の方が若干(2〜3万マイル)多く必要になります。
これはデルタのマイルチャート(変動制)がANA(固定制)よりやや割高だからです。
しかし、現金持ち出し(キャッシュアウト)は8万円以上安くなります。
さらに重要なのが「予約難易度」です。
ANAの往復特典航空券(特にビジネスクラス)をハイシーズンに確保するのは、もはや「宝くじ」に近い確率です。
一方、片道ずつであれば、「行きは360日前(ANA解禁日)に確保」「帰りは330日前(デルタ解禁日)に確保」といった具合に、勝負のタイミングを分散できるのです。
「取れない11万マイルの幻のチケット」より、「確実に取れる13.5万マイルのチケット」の方が、価値があるとは思いませんか?
2026年の狙い目:ANAとデルタの必要マイル数が下がる時期
最後に、この戦略を成功させるための「時期(タイミング)」について解説します。
ANAとデルタ、それぞれの「敵」を知ることが重要です。
- ANAの敵:シーズナリティ(H/R/L)。ハイシーズン(H)は必要マイルが跳ね上がる。
- デルタの敵:ダイナミックプライシング。混雑日はマイル数が青天井(100万マイル超えも)になる。
The Sweet Spot:4月と10月を狙え
この2つの曲線が交わらない「真空地帯」が存在します。
それが「4月中旬(GW前)」と「10月(欧州の秋)」です。

この時期、ANAはレギュラー(R)またはロー(L)シーズンでお得に発券でき、かつデルタも観光オフシーズンにつき「最低マイル数」で座席を開放する傾向があります。
逆に、夏休み(8月)や年末年始は、このハイブリッド戦略をもってしても攻略は困難です。
(デルタのマイル数が爆発するため)
裏技:提携航空会社(Partner Awards)への逃げ道
もしデルタ航空の自社便が高騰している場合は、同じスカイチームの「大韓航空(KE)」や「チャイナエアライン(CI)」を探してください。
提携社特典の場合、マイル数は「固定チャート」が適用されることが多く、ダイナミックプライシングの嵐を回避できるケースがあります。
ソウル経由や台北経由にはなりますが、ビジネスクラスの快適さは保証されています。
FAQ:よくある質問と「マニアックな懸念」
この変則的な発券について、鋭い読者の皆様から想定される質問に先回りして回答します。
- Q1. 別切り発券だと、乗り継ぎで荷物はどうなりますか?
-
A. 原則、一度ピックアップが必要です。
往路(ANA)で現地に到着したら、一度入国して荷物を受け取り、復路(デルタ)のカウンターで預け直す必要があります。
ただし、私が提案しているのは「日帰り」のような弾丸旅行ではなく、現地で数泊するきちんとした旅行ですので、これはデメリットにはなりません。
むしろ、アライアンスが違うことで、万が一のロストバゲージのリスク分散(全滅を防ぐ)にもなります。 - Q2. 片道だと入国審査で怪しまれませんか?
-
A. 「帰りのチケット(Eチケット控え)」を見せれば秒で解決します。
入国審査官が見ているのは「ちゃんと国を出ていくか」だけです。
航空会社が違っても、出国する予約さえあれば何の問題もありません。
むしろ、「行きはANA、帰りはデルタなんて、君はエアラインマニアか?Haha!」と会話が弾むことすらあります。 - Q3. マイルが分散して貯まりにくいのでは?
-
A. それこそが「ポイ活」の腕の見せ所です。
ANAマイルは「三井住友カード」や「ソラチカルート(改)」で貯め、デルタマイルは「マリオットポイントからの移行」や「キャンペーン」で貯める。
源流を分けて管理することで、リスクヘッジになります。
「一つのカゴに卵を盛るな」は投資の格言ですが、マイルの世界でも同じです。2026年は「マイルの分散投資」がスタンダードになります。 - Q4. 家族4人でもこの戦略は使えますか?
-
A. 正直、4人分を特典で確保するのは高難易度です。
しかし、ハイブリッド発券ならチャンスは倍増します。
「行きはANAで2名、有償で2名」「帰りはデルタで全員」など、柔軟な組み合わせが可能だからです。
特にデルタは「マイル+キャッシュ」の使い勝手が良く、足りないマイルをお金で補填して家族分を取ることが容易です。
デルタマイルの貯め方(Earning Strategy)

「戦略はわかった。でもデルタのマイルなんて持っていない」
そんなANA派のあなたに、効率的なデルタマイル獲得ルートを伝授します。
1. マリオットポイントからの移行
「Marriott Bonvoy」のポイントは、主要航空会社のマイルに1:1(ボーナス込みで1.25倍)で交換できますが、デルタもその対象です。
ANAマイルの有効期限(3年)が切れそうな時、避難先としてマリオットなどの「無期限ポイント」を持っておくことはリスクヘッジになります。
2. 入会キャンペーンの爆発力を利用する
デルタ・アメックスは入会キャンペーンが強烈です。
時期によっては、「入会+利用で5万〜10万マイル」という案件が出現します。
この「一撃」だけで、今回紹介した「シアトル発羽田行き(デルタ・ワン)」の片道切符がほぼ手に入ります。
常にアンテナを張っておくべきです。
また、日本国内線を利用するだけでマイルが貯まる隠れたルート(提携カード特典など)も存在しましたが、現在は縮小傾向にあります。最新情報は公式サイトを必ず確認してください。
まとめ:空の「フリーエージェント」になれ
2026年、航空会社への忠誠心(Loyalty)は、もはや美徳ではありません。
それは時として、あなたの選択肢を狭め、財布を痛めつける「呪い」になります。
ANAの丁寧な日本語サービスも愛する。
デルタの合理的なコストパフォーマンスも利用する。
この「いいとこ取り」こそが、これからの賢いトラベラー(Smart Traveler)のあり方です。
SFCカードと、デルタスカイマイル(またはアメックス・プラチナ等)。
この2枚を武器に、アライアンスの壁を飛び越えてください。
世界一周航空券(RTW)がなくなったからといって、世界一周ができなくなったわけではありません。
あなたの知恵とマイルがあれば、ルートは無限に広がっているのです。
Next Step: デルタマイルをどう貯める?
ANAマイルの貯め方は熟知しているあなたも、デルタマイル(スカイマイル)の貯め方には不安があるかもしれません。
詳しくは以下の完全ガイドで解説しています。


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