【本記事の取り扱いについて】
本記事は、ポイント・マイル獲得効率を最大化するための検証・計算ログです。特定の金融商品の勧誘や、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断およびクレジットカードの契約は、各公式情報をご確認の上、ご自身の責任で行ってください。
2025年、陸マイラー界隈に激震が走りました。「改悪」という言葉がSNSのタイムラインを埋め尽くし、これまで信じられていた「最適解」が次々とエラーを吐き始めたのです。
私はソフトウェアエンジニアとして、常にシステムの「仕様変更」には敏感でありたいと思っています。しかし、今回の変更(という名の改悪ラッシュ)は、単なるパッチ当てで済むレベルではありません。マイル獲得のコアロジックそのものを書き換える必要がある、メジャーアップデートです。
本記事では、SBI証券の還元率改定やマイル交換ルートの封鎖など、2025年に発生した「バグ」を整理し、2026年以降も生き残るための「マイル生存戦略」をエンジニア視点で設計・提案します。
この記事でわかること(System Spec)
- SBI証券の「還元率0%」改定による損失額シミュレーション
- マリオットAmex値上げ(82,500円)を回収できる損益分岐点の計算式
- 「100万円修行」が標準化する2026年の新常識と決済集約術
- インフレ時代に持つべき「メインカード×証券口座」の最終結論
プロローグ:2025年、「バラマキ」は終わった

かつて、日本のポイ活・陸マイラー市場は「ボーナスタイム」にありました。カードを発行し、口座を開くだけで、数万マイルが湧き出てくる。それはまるで、ゲームのバグを利用した無限増殖のような時代でした。
しかし、2025年。その甘いシステムは強制終了されました。私たちが直面している「3つの致命的な仕様変更」を、まずは感情論抜きで、数字として直視しましょう。
SBI証券「還元率0%」の衝撃|カードを持ってるだけでは勝てない時代
これまで「投信積立ならSBI×三井住友カード」が一強でした。何も考えずに設定しておけば、年間数千ポイントが自動的に降ってきたからです。
しかし、2024年11月買付分からの新ルールは、私たちに冷水を浴びせました。
SBI証券×三井住友カード(NL)の改定内容
- 旧仕様:無条件で0.5%付与
- 新仕様:年間カード利用額10万円未満なら0%(付与なし)
- 条件:年間10万円以上利用で0.5%に復帰
「たった10万円」と思うかもしれません。しかし、これは象徴的な変化です。「決済という労働(貢献)をしないユーザーに、ポイントという配当は渡さない」という、プラットフォーマーからの明確なメッセージだからです。
実際に、この改定がどれほどの損失を生むのか、シミュレーションを行いました。
【Data】10年間の損失シミュレーション(月5万円積立の場合)
もし対策をせず、還元率0%のまま積立を続けた場合と、0.5%を維持した場合の差額です。
| 期間 | 旧仕様(0.5%) | 新仕様(0%) | 機会損失額 |
|---|---|---|---|
| 1年間 | 3,000 pt | 0 pt | -3,000円 |
| 10年間 | 30,000 pt | 0 pt | -30,000円 |
| 20年間 | 60,000 pt | 0 pt | -60,000円 |
複利効果を考慮せずとも、単純計算で6万円の差がつきます。これをANAマイルに交換(レート0.5倍〜0.7倍)すれば、国内線往復チケット数枚分が消滅することになります。
エンジニア的に言えば、APIのアクセス権限が厳格化され、「認証(決済実績)」がないリクエストは403 Forbiddenで弾かれるようになったのです。
マリオットAmex「82,500円」への値上げ|維持か解約か
陸マイラーの神器と謳われた『マリオットボンヴォイ・アメックス・プレミアム』。その年会費が49,500円から82,500円へ跳ね上がると報じられた時、多くのユーザーが解約ボタンに手をかけました。
私も計算しました。感情的には「高すぎる」と感じますが、ロジックとしてはどうなのか。冷静に損益分岐点を叩いた結果、一つの結論が出ました。
【Logic】損益分岐点の再計算
このカードの最大のメリットは、年間150万円決済で付与される「無料宿泊特典(50,000pt相当、トップオフで最大65,000pt)」です。これが年会費82,500円に見合うかどうかを検証します。
エンジニアの試算:維持すべき条件
- 条件A:年間400万円決済が可能
→ プラチナエリート付与。朝食無料・ラウンジアクセスが付くため、年数回の宿泊で元が取れる。【維持推奨】 - 条件B:年間150万円〜399万円決済
→ 無料宿泊特典(価値:約3万〜5万円)+決済ポイント(4.5万pt〜)。合計価値が年会費とトントンか、ややマイナス。【要審議】 - 条件C:年間150万円未満
→ 特典なし。単なる高額なポイントカード。【即解約】
非常にシビアな閾値(しきいち)です。このカードはもはや、万人向けの魔法の杖ではなく、選ばれた「高額決済ユーザー」だけが使いこなせる強力な武器へとクラスチェンジしたのです。
プライオリティパスの「レストラン除外」|旅行体験の質が問われる
楽天プレミアムカードに続き、セゾンプラチナ・ビジネス・アメックスなどでもプライオリティパスの改悪が続きました。特に「レストラン特典の利用不可」は、空港での楽しみを奪う大きな痛手です。
これまでは「ぼてぢゅう」等で3,400円分の飲食が無料になりましたが、それが消滅します。「ラウンジが使えるからいいじゃないか」という意見もありますが、カードラウンジの混雑や、食事の質を考えると、このダウングレードは致命的です。
ここでの教訓
「年会費無料・無条件」のサービスは、いつサ終(サービス終了)してもおかしくない。コストを払ってでも「改悪されない権利」を買うか、システムに合わせて自分をアップデートするか。二つに一つです。
基礎的なマイルの貯め方をおさらいしたい方は、以下の記事も参照してください。ただし、本記事ではさらに踏み込んだ「2026年版」の戦略を語ります。
2026年の新ルール:「年間決済額」がすべてを支配する

2026年のマイル戦略において、最も重要なKPI(重要業績評価指標)は何か。それは還元率でも年会費でもありません。「年間決済額(Annual Spending)」です。
これまでは「この店ではAカード、あの店ではBペイ」と使い分けるのが賢いとされてきました。しかし、これからはその分散こそがリスクになります。
「ポイ活浮気」のコスト|分散処理の罠
少し前までの私は、いわゆる「ポイ活乞食」でした。コンビニでは三井住友、楽天では楽天カード、Yahoo!ショッピングではPayPayカード、特約店ではJALカード…。財布はパンパンで、スマホには決済アプリが2ページにわたって並んでいました。
ある日、レジで「えーと、この店はどれがお得だっけ?」とアプリを切り替えている間に、後ろに行列ができていることに気づきました。その時、強烈な恥ずかしさと共に、エンジニアとしての自分がこう囁いたのです。
「このシステム、レイテンシ(遅延)が高すぎるし、保守コストに見合ってないぞ」と。
【Data】分散型 vs 集中型|10年後の資産格差
多くの人が誤解していますが、0.5%の還元率差を追うよりも、「年間利用額ボーナス」を取るほうが圧倒的にリターンが大きいです。
| 戦略モデル | 決済スタイル | 年間還元(マイル換算) | 付帯ステータス |
|---|---|---|---|
| 分散型(旧来) | 5枚のカードを使い分け (還元率重視) | 約15,000マイル (ボーナスなし) | なし (平会員のまま) |
| 集中型(2026年) | 1枚に集約 (150万円決済) | 約25,000マイル (基本+ボーナス) | ホテル無料宿泊 or ラウンジ権利 |
分散型は「小銭」を拾いますが、集中型は「資産(ステータス)」を築きます。2026年の戦略は、明らかに後者です。
生存戦略マップ:3つの「エンジン」を再設計する


では、具体的にどうシステムを組めばいいのか。私は「ただ貯める」のではなく、以下の3つのエンジンを並列稼働させるアーキテクチャを提案します。
エンジンA【投資】:新NISA×クレカ積立の実装
これは「攻め」ではなく「守り」のエンジンです。資産形成(新NISA)を行いながら、あくまで副産物としてマイルを生成します。
2026年の主要な選択肢(API)
- SBI証券 × 三井住友カード:
Vポイント経済圏。ANAマイルへの交換レートは標準的(0.5倍)だが、「ソラチカカード」などを経由する交換ルート(みずほルート等)がまだ生きているかが鍵。また、三井住友カードの「100万円修行」のカウント対象外であることが多い点に注意が必要です。 - マネックス証券 × dカード:
2024-2025年の台風の目。dポイントはJALマイルへの交換レートアップキャンペーン(実質0.6〜0.7倍)を定期的に行うため、JAL派のエンジニアには有力な選択肢となります。 - 楽天証券 × 楽天カード:
SPU(ポイントアップ)を含めた楽天経済圏の住人用。ANAマイルへの交換はシンプル(0.5倍)ですが、爆発力には欠けます。
重要なのは、「自分のメインカードと連携できる証券会社を選ぶこと」です。カードと証券会社がバラバラだと、ポイントの出口が分散し、マイルに交換する際の最低交換単位(Min. Withdraw)に届かないリスクがあるからです。
詳細な損益分岐点の計算と比較は、以下の記事で徹底的にデバッグ(検証)しました。SBIの改悪に不安がある方は必読です。
エンジンB【決済】:メインフレームの選定(JCB/Amex)
日々の生活費、税金、サブスクリプション。これらすべてのトランザクションを処理する「メインフレーム」です。2026年のトレンドは、「Visa/Mastercardのサブスク化」と「プロパーカードへの回帰」です。
Visa/Mastercard依存のリスク
近年、海外での決済手数料値上げや、特定サービスでの利用制限など、国際ブランド側の締め付けが厳しくなっています。そこで再評価されているのが、日本の国際ブランドJCBと、独自のステータスを持つAmerican Expressです。
特にJCBのプロパーカード(オリジナルシリーズ)は、「JCBザ・クラス」という明確な到達点(ゴール)が用意されています。このカードは申し込みでは手に入りません。長年の「クレヒス(信用履歴)」というログを積み上げた者だけに招待状(インビテーション)が届きます。
…最も安定したサーバ運用術かもしれません。なぜ私がVisaではなくJCBやAmexを推すのか、その技術的根拠は以下にまとめています。
エンジンC【旅行】:SFC/JGCという「永続ライセンス」
マイルを貯めた後の「出口戦略(Exit Strategy)」です。
どれだけマイルがあっても、特典航空券が取れなければ意味がありません。そして、インフレで航空券代が高騰する中、エコノミークラスの狭い座席で12時間を過ごすのは、体力的なコストが高すぎます。
ここで効いてくるのが、航空会社の上級会員資格(SFC / JGC)です。
ステータスが保証するUX(ユーザー体験)
- ラウンジアクセス:搭乗前の食事とアルコールが無料(食費の削減)。
- 優先チェックイン:長蛇の列をスキップ(時間の節約)。
- 手荷物許容量アップ:海外旅行での追加コスト回避。
- 特典航空券の優先枠:一般会員には見えない空席へのアクセス権(これが最大の実利)。
私は2023年にSFC(スーパーフライヤーズカード)を取得しましたが、この投資判断は正解でした。クレジットカードのポイント制度はコロコロ変わりますが、航空会社のライフタイムステータスは、一度取得すれば(カード年会費を払う限り)半永久的に機能するからです。
エンジニアの結論:システムを「シンプル」にせよ

2026年問題への対策として、私が最後に提唱したいのは「マイル獲得システムの断捨離(リファクタリング)」です。
「あっちのペイで還元率20%!」「こっちのカードで入会キャンペーン!」
そうやって情報を追いかけ、レジ前でアプリを切り替え、ポイントを分散させるコスト(時間単価)を計算したことはありますか? エンジニアとして言わせていただければ、それは「運用保守コストが高すぎるスパゲッティコード」です。
2026年は、管理コストを極限まで下げるべきです。数%の還元率を追うよりも、本業や副業、あるいは「映画を観る時間」にリソースを割くほうが、人生のROI(投資対効果)は確実に高くなります。
2026年に僕が実装する「メインカード×証券」の最終セットアップ
現時点での私の結論(Reference Architecture)は以下の通りです。この構成は、陸マイラーとしての「実利」と、ホテル・航空会社の「ステータス」を両立させるために計算されたものです。
CINEMILE管理人の2026年稼働環境(Production Env)
- メイン決済(Hub):
マリオットボンヴォイ・アメックス・プレミアム
(目標:年間400万円決済 → プラチナエリート+マイル還元率1.25%) - サブ決済(Redundancy):
ANA VISAプラチナ プレミアムカード
(SFC維持+ANA航空券購入時の最大還元率確保) - 資産運用(Engine):
SBI証券 × 三井住友カード(NL)
(新NISA満額積立。100万円修行は考慮せず、あくまでVポイント→ANAマイルのパイプラインとして利用) - 特例処理(Patch):
JALカード(CLUB-A)
(JGC維持用&イオン・ファミマなどの特約店専用)
この構成のポイントは、「出口の明確化」です。
- 日常決済 → マリオットポイント(ホテル宿泊 or 40社以上のマイルへ交換可能)
- 投資・フライト → ANA/JALマイル(航空券直結)
ポイントが「使えないゴミ」になるリスクを回避しつつ、ホテルと航空機という旅の2大コストをカバーする。これが、私が辿り着いた「インフレに負けないシステム」です。
不要なカード(Dead Code)を削除せよ
システム移行の第一歩は、新しいサーバを立てることではありません。古いサーバをシャットダウンすることです。
「年会費無料だからとりあえず持っている」
「いつか使うかもしれない」
そうやって死蔵されているカードは、セキュリティリスクであり、管理コストの無駄です。2026年の新ルールに適合しないカード(年間100万円使わないカードなど)は、思い切って解約(Delete)しましょう。
財布の中身を物理的に3枚以下に絞ったとき、あなたのマイル戦略は驚くほどクリアになります。
まとめ:嵐の中で羅針盤を持て
2025年から2026年にかけて、ポイント・マイル業界のルールは激変します。しかし、恐れる必要はありません。ルールが変われば、戦略(アルゴリズム)を書き換えればいいだけのことです。
本記事のTakeaway
- 「バラマキ」は終了した。対価(決済額・コスト)を払う者だけが優遇される。
- SBI証券の改悪は「投資」と「ポイ活」を分離して考える契機にせよ。
- メインカードを1枚に定め、年間決済額150万円〜400万円の壁を突破せよ。
次回からの記事では、この戦略マップの解像度をさらに上げ、具体的な実装手順を解説していきます。
まずは「記事②:証券会社編」にて、SBI・マネックス・楽天のどれがあなたのメインカードと最も相性が良いのか、エンジニア独自の計算式で解明します。
そして「記事③:クレジットカード編」では、JCBやAmexの「噂」の検証と、最強のカード選びに終止符を打ちます。
システムアップデートの準備はいいですか?
嵐の海を越えて、まだ見ぬ映画のロケ地へ飛び立ちましょう。





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